海苔の豆知識

市販されている海苔のパッケージを見ると、内容量のところに「8切48枚(板のり6枚分)」や「横2切20枚(板のり10枚)」というような記載があります。「板のりとは、いったい何だろう?」と思ったことはありませんか? 業務用の海苔もご家庭用の海苔も、大きさを表すときには、「板のり」という規格を基準にしています。「板のり」は、原則としてタテ21cm×ヨコ19cmです。ご家庭用の海苔は、用途に合わせて食べやすい大きさ、使いやすい大きさに予め切られたものが販売されているので、味付海苔の大きさ、手巻き海苔の大きさなどは、メーカーが異なってもほとんどが同じサイズになっています。たとえば株式会社福井の味付海苔「味・のりのりだ!」や、手巻寿司にぴったりな焼海苔「のりだより」は、それぞれ「8切48枚(板のり6枚分)」と「横2切20枚(板のり10枚)」です。 (業務用の海苔製品については、ご要望に応じたさまざまなカットを承っております。) では、どうして「板のり」サイズはタテ21cm×ヨコ19cmに統一されているのでしょうか。古くは江戸時代にさかのぼります。 ※以前は「全形」でしたが、海苔加工組合(現在は解散)で、表記を板のりにすることが2015年5月に決まり、それ以後「全形」表記は使われなくなりました。

初期の海苔の大きさは

海苔として四角く薄い紙状に成形する方法は、江戸時代に浅草紙の製法をヒントに野口六郎左衛門が開発したと伝えられています。 このときのサイズは、八寸×七寸五分(24.2cm×22.7cm)。今と比べると少し大きかったようです。御膳海苔(ごぜんのり)と称する海苔においては、36.4cm×30.3cmと、さらに大きめな海苔でした。

江戸での標準サイズの普及

海苔の生産量が増加するにつれ、海苔の標準サイズが変わっていきます。江戸時代、荷物の輸送に使われていた「大八車(だいはちぐるま)」に積める箱「海苔平箱」のサイズは、86.4cm×42.4cm×24.2cm。この「海苔平箱」に、海苔を「20帖×8列」にしてぴったり納めることができるサイズが「大森小判」と称される20.6cm×18.8cmでした。現在の「全形」とほぼ同じくらいの大きさです。この「大森小判」が普及していくことになるのですが、「海苔平箱」の普及と、それに合わせた流通のしやすい形態が好まれたからだろうと考えられています。

東京から全国へ

1915年(大正4年)以降になると、東京では「大森小判」が主に使われていましたが、各地方へ行くとそれ以外にも多数のサイズが作られていました。しかし、やがて「大森小判」が全国統一規格となります。当時、海苔は江戸前のイメージが強かったため、その影響で東京の標準サイズである「大森小判」が全国に浸透していったのでしょう。

現在の統一サイズ

現代の海苔箱

第二次大戦後は、1942年1月に節約思想の一環として決められたサイズである「戦時統制判(19.1cm×17.6cm)」がしばらく使われましたが、全自動乾海苔製造装置が普及して以降、機械メーカーごとにサイズが決められるようになり、現状ではほとんどがタテ21cm×ヨコ19cmの「全形」に統一されています。 ちなみに現代の海苔箱は、おおよそ縦60cm×横42cm×高さ50cm程度のダンボールです(右写真)。内袋に、ビニール袋か防湿性の高いアルミラミネートの袋を使っています。

海苔のウラオモテ

海苔の裏(左)と表(右)

海苔のサイズは上述のようにして統一されてきました。 では、海苔の裏表はどうしてあるかご存知でしょうか。 ご存じのとおり、海苔にはガサガサの面とツルツルの面があります。

ガサガサ=裏面

全自動海苔乾燥機のすのこ

海苔は、ワカメのように薄い海藻であり、海苔網から刈り取った原藻を細かく裁断し、水と混ぜたものを全自動海苔乾燥機のすのこに流し込みます。 このとき、すのこに接触している面が海苔の「裏面」になります。 裏面は、すのこに接触するために海苔ががさついており、これを「海苔足」と言います 。

ツルツル=表面

表面は、裏に比べると明らかにつるつるになっています。 通常、海苔をおにぎりに巻く際には、見た目のよい表面を外側になるようにします。
引用・参考文献 加工海苔入門 日本食糧新聞社 2001年11月 ものと人間の文化史111 海苔(のり) 宮下章 2003年3月